Yasuo's Notebook

ソフトウェア開発の話題が中心の備忘録です。

プロダクトオーナーのスキルについて

3/21にPOミートアップに参加してきました。山本さん、Akiさん、ありがとうございました!
この集まりをやろうと思ったきっかけがAgile Tour Osaka 2012だったとお聞きして嬉しく思いました。
当日は、プロダクトオーナーをやったことがある、あるいは今やっている、プロダクトオーナーではないがスクラムマスターやチームメンバーとしてプロダクトオーナーとどう関わっていくかに関心があるという参加者が集まりました。
プロダクトオーナーの方々も、サービスや製品をエンドユーザに提供する立場、受託開発の立場など異なる立場からプロダクトオーナーとしての体験談や、悩んでいることなどを共有しディスカッションしました。
私からは、プロダクトオーナーのスキルとして求められることとして日ごろ考えていることとして次のようなことを紹介しました。


スクラムフレームワークを踏まえた振る舞い

まずスクラムフレームワークを適用した開発においては、プロダクトオーナーはスクラムフレームワークを踏まえた振る舞いをする必要があります。具体的には、「プロダクトバックログを提供し、メンテナンスし続けること」「スクラムでプロダクトオーナーが出席する必要のある会議体に出席すること」「仕様や優先順位を決定することができる唯一の人と自覚すること」「チームの見積もりを受け入れること」などです。これらは、今までのやり方の延長線上でなんとなくできることではなく、スクラムフレームワークをしっかりと理解し、自分がプロダクトオーナーとしてどう振る舞うべきかを考えて行動する必要があります。スクラムマスターがプロダクトオーナーに対してもっとも有効な支援ができる領域だと考えています。

プロダクトバックログを作ること

プロダクトバックログはリスト形式で書かれている内容も従来のドキュメントより少なくなっているように見えるので、一見、作成が簡単なように思われるかもしれませんが、私は、プロダクトバックログを作成するには、要求分析やその形式化の高いスキルを求められると考えています。プロダクトバックログは優先順位が低いものは大きな粒度で、優先順位が高いものは、チームが実行可能な適切な粒度になるようにメンテナンスし続けると言われています。すなわち、「実施時期を見極めながら、要求を徐々に詳細化し、優先順位によって、プロダクトバックログ項目の粒度をコントロールする」という行為がプロダクトオーナーには求められています。従来の要求仕様書を考えたとき、文書の構造と要求の粒度の対応が適切に取られている文書を作成できる人は相当レベルが高い人だと考えます。このような高いスキルがないとプロダクトオーナーになれないと考えるのではなく、プロダクトバックログをメンテナンスしていくことで、適切に粒度をコントロールし表現できるスキルを身に着けることができるようになると考えれば良いと思います。

反復的にシステムを作っていくこと

反復的にシステムを作っていく上で、どういう順番に作っていくと作りやすいという要素は技術的にはどうしても必要だと考えています。この点に関しては、開発チームがプロダクトオーナーに対して提案を積極的に行うと良いと思います。
ものづくりの観点からのチームの意見も考慮しつつ、製品にとって何が良いかをプロダクトオーナーが責任をもって判断する必要があります。

価値の高い製品を追っていくこと

前の3つのスキルを発揮することにより、開発がうまくまわり、順調に製品がリリースされても、作っている製品が役に立たなければ意味がありません。プロダクトオーナーの本質的なスキルとして、価値の高い製品を追っていき、それを具体化していくことが必要だと思います。プロダクトオーナーについての議論をするときに、このスキルにフォーカスして話をする人と前の3つのスキルを重視して話をする人の話がかみ合わないことが多いですが、両方とも大切なスキルだと思います。

経営的なこと(プロジェクトへの投資、あるいは中止)

最後に、製品開発をする上で、プロジェクトへお投資を増やすことでもって価値が出せたり、勇気をもってプロダクトを中止した方がよい場合があります。プロダクトオーナーは経営者に対して、これらの状況について説明し自分の意見をしっかりと述べて、経営者に決断を促す必要があります。


このように書いてみるとプロダクトオーナーはさまざまな面のスキルを必要として、「こんな人はいないよ」と思われるかもしれません。実際、プロダクトオーナーが一人ですべてをこなすことは難しいと思います。
なので、スクラムマスターや開発チームがプロダクトオーナーに対して支援や提案を行うことが重要ですし、プロダクトオーナーのチームを組むことも考えられます。プロダクトオーナーチームを作るときの注意点として、優先順位を決めたりプロダクトバックログの内容を決める責任者を1人に明確に決めることです。プロジェクトのメンバーだけではなく、マネージャや経営者、QA、スタッフなどが組織としてプロダクトオーナーを支援することも重要です。
今後もPOミートアップでこれらのことについて議論を深めていければと思います。